抽選でグレイトな番号を引き当てる!だが、今はカッコつけるときではない……

シリーズ名
回胴皇帝的必勝塾ドッカーン (毎週木曜日更新)
話数
第129回
著者
スロカイザー

某月某日。私は都内某ホールの朝抽選に挑んでいた。

このホールはめっちゃ人が並ぶことで有名で、何でもない日でも余裕で百人以上が並び、土日祝日ともなれば数百人規模の大行列ができる。

で、本日は土曜日。めっちゃめっちゃ並ぶ日だ。何故、この日に実戦するのか?

このホールに行くには片道1時間以上電車で揺られる必要がある。もし、朝抽選に失敗したら完全に時間の無駄になってしまう。それなのに、どうしてこの日に実戦したのか?

それには深い理由がある。いや、不快な理由がある。

パチスロ必勝本で絶賛公開中の『絶対王者』という動画企画。ガチで勝ちを目指すライターによるガチのバトル企画。そんなガチガチの企画であればこそ、

いつなんどき、どんな体勢でも遊技し、レバーを叩ける男、無限のプレイスタイルを持つ男。

スロカイザーがレバーを叩けば、ジャスト・ホール・アウト。ATMに向かうのみ。

I AM SLOTMASTER.
I AM SKS.
I AM SLO KAISER.

私が呼ばれないハズはない。

ハズ…なのだが、不思議と全くオファーが来ない。あり得ない、あり得ない。これは一体どういうことなのか。私はその理由を考えて考えて考え抜いた結果、ある1つの結論を導き出した。

「私が強すぎるゆえに避けられているのだ」

よし、避けられているのなら、こちらから勝手に挑んでやる。

ということで、カイザーネットワークを駆使して『絶対王者』の収録日と実戦ホールを調べ上げ、その当日に突撃してみたのだ。

朝、喫茶店に入って実戦前の優雅なモーニングタイム。メロンソーダを体内に注ぎ込みながら、時が来るのを待つ。慌てない慌てない、ひと休みひと休み。休めるときにしっかりと身体を休めるのが戦いのプロだ。

ゆっくりと時間が流れる中、ぼーっと周りを眺める私。カタカタとノートPCで何かの数値を打ち込んでいるサラリーマン、ポチポチとスマホをいじっている若者、ゲスゲスとパチスロの話をしているKEN蔵氏とクボンヌ氏。皆、各々の時間を過ごしている。

………!!!

パチスロの話をしているKEN蔵氏とクボンヌ氏!?

なんてこった、パンナコッタ。憎き『絶対王者』の参加者ではないか! くそ、呉越同舟とはまさにこのこと。私は2人に声を掛けず、じっと睨み続けた。しばらくして睨み飽きたのでKEN蔵氏のLINEに

「今、○○(喫茶店の名前)にいるだろ」

「…私はいつもお前を見ているぞ」

とメッセージを送った。「こわい、こわい」という返信を見て、ニヤリとほくそ笑む。キョロキョロと挙動不審全開のKEN蔵氏とクボンヌ氏。完全に動揺している、もう彼等の負けは確定したも同然だ。

ちなみに今日の実戦機種はもう決めている。その機種の名は『ダンガンロンパ』。なぜダンガンロンパにしたかというと、この機種のホール出玉率が極端に低いという話を聞いたからだ。

皇帝たる私がありきたりの機種を選び、本気を出そうものなら、有象無象のライターどもが勝てるハズがない。面白味もない。これはハンディキャップだ。

あと、朝抽選に失敗する可能性が高いので、どんな番号でもゲットできる可能性が高い機種のほうが予定が狂わないで済む。

なんというパーフェクトな戦略。略して「クト戦」。準備は万全、『絶対王者』の奴らに目にものを見せてやる!

えっ??

じゅ、13番…だと??

ど、どうしよう。こんな並びの中でこんなナイスな番号を引けるとは思わなかった。え、こんなステキな番号で自分はダンガンロンパを打つのか、打ってイイのか?

いやいやいや、どう考えてももったいない。こんなにグレイトな番号なら看板機種を攻めるべきだ。うむ、そうだそうするべきだ。

ダンガンロンパはいつでも打てるが、この番号は今日しか引けない。ならば、私の選択肢は決まっている。打つべき機種は決まっている。それは、ばんちょ…

「本当にそれでイイのか?」

「信念を貫かなくてもイイのか?」

「その選択は正しい。だが、お前は本当にそれでイイのか?」

自分の中の"何か"がそう囁いた。いやいやいや、どう考えてもダンガンロンパを打つのは正解ではない。というよりも、間違いだ。

「だが…間違った選択をして勝ったらカッコイイぞ」

再び、"何か"がそう囁いた。私はこいつの正体がなんとなく判ってきた。こいつは"カッコつけ"だ。たしかにダンガンロンパを打って『絶対王者』の面々以上の出玉を獲得したらカッコイイ。

だが、今はカッコつけるときではない。むしろこの状況における正解、つまり絶対王者たる立ち回りとは、王道を選択した上での完全勝利ではないだろうか。的確な状況選択とはそういうことだろう。よし。

そして、開店時間。

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カッコつけの誘惑に負けたリトル愚かな私。

そして、昼過ぎに泣きながらホールを去ったリトル愚かな私。

カッコつけ、カッコ悪い。