「CR今日もカツ丼」が全国で大赤字!? 使いこなす気がないのなら、ホール側は今後軽い気持ちで一発台などを購入しないでほしい
- シリーズ名
- 現役ホールマネージャーだけど、なんか聞きたいことある? (毎週日曜日更新)
- 話数
- 第121回
- 著者
- アタマキタ
ここのところワールドカップ中継の観すぎで寝不足である。
日本代表がベスト16入りして一気に盛り上がったワールドカップも、ベルギーに惜しくも破れ、ワールドカップロス現象が起こっているようだ。
そんななか、パチンコ業界ではまた重大な事件が起きた。「CR今日もカツ丼」ロスである。
もうすでにご存じの方も多いとは思うが、改めて簡単に説明すると、新機種として導入されたこの機械が全国の平均データで4日間連続大赤字になったのだ。
早いホールでは導入2日目から故障の札を取り付け、機械を止める事態になった。そのようなことが全国のホールで行なわれていたのである。そして、現在は撤去してしまったホールすら見受けられる。
なぜこんなことが起きたのだろうか?
当初、この記事を書くことを躊躇したのだが、時を同じくして前回のコラムで書かせてもらったメーカーの問題があった。同じくメーカーの問題だが、前回のコラムの問題とはまったく異質の問題だということを皆さんに理解して頂きたいという思いが強くなり、今回書かせて頂くことにした。
まずこの機械のスペックを振り返ってみよう。
【CR今日もカツ丼】
大当たり確率…約1/9
大当たり出玉…約4100個
等価交換での初当たりまでの投資金額の分岐点…4100個×4円=16400円
等価交換での役物への飛び込み個数の分岐点…16400円÷9=1822円で1個
という計算になる。
多少の確率のブレが発生するのは当たり前なのだが、概ね約1800円で1個飛び込めば損益分岐点になる。よって、これよりも飛び込み個数が多いと、時間をかければ確実にホールが赤字になっていく。
肝心の飛び込みの部分だが、縦に開いた入口部分を突破すれば、玉は役物内に入っていく。
この機種はもともと玉が中央に寄りやすくなっていて、割と入口部分までは玉が向かいやすい。そのため入口部分の釘のサイズは致命的に重要で、いわば役物への入賞率をコントロールする役目、ひいては台の命運を決する命釘というわけだ。
その入口部分の釘のサイズだが、仮に髪の毛2本分くらい広がれば飛び込みは25%ほど上昇し、さらに髪の毛4本分では50%もアップする。
これがどれくらいのことかというと、通常なら大当たり到達までに約16400円かかるところを、飛び込みが25%アップする髪の毛2本分広かったとすれば約13100円、50%アップする髪の毛4本分ならば約10900円で済むことになる。単純に入口部分が髪の毛4本分広かったとすると、大当たりが出るたびに約5500円プラスになる計算だ。
こういう機械が新台で入荷されると、俺はミスがないようにとりわけ長時間飛び込みのテストを行ない、お客様が大負けすることがないように見極めていく。
セブン機と違ってサンプルが採りにくいこういう機械は、大変な作業ではあるが、とにかく時間をかけて確認していかなければならない。
しかし、こういった地道な作業をせず、ホール責任者のちょっとしたテスト打ちで済ませた結果、飛び込まないから釘を大きくアケたというホールがゴロゴロあった。
仮に髪の毛4本分広かっただけでも大変なことになるのに、ガツンとやってしまえば夢の5万発オーバーコースになるのは確実だ。ちなみに、このガツンというサイズは、それでもたった1mm程度の話である。
結果、想定外の大赤字を出してしまったホールが多数あった。そこまでは別にいい。それを踏まえて、翌日からゆっくりと釘をシメればいいだけの話だから。
ところが焦ったホールが色々と釘をいじくりまわし、結果2日目も大量出玉が止まらないという事態になった。その後も止まらず全国データでは4日間連続でこの機種は赤字となっている。
問題はここからだ。
完全に赤字を取り戻せないと悟ったホールはこの機械を欠陥台だと決めつけ、札止めして機械を動かさなかったのだ。
そして、そのホールはメーカーに対して「赤字を補填しろ」だとか「機械を返すから代金は払わない」とか言い出したのだ。
当たり前だが全てのホールがこんなヤカラな対応をしたわけではなく、こんなことをしたのはほんの一握りのホールだけだ。
しかし、この部分においてはメーカーにも多少の落ち度はあった。
今は見た目はプラスティックに見える樹脂の盤面を使うことが多くなっているのだが、この機械はいわゆるベニヤの合板に釘が打ち付けられた機械だ。
このベニヤと樹脂の盤面の大きな違いは、釘の打ち込み位置の精度にある。樹脂はもともと穴が開いているところに釘を打ち付けていくのだが、ベニヤの盤面は直接釘を打ち込んでいく。そのため、ベニヤの硬さや水分の含有量により若干釘のサイズが変わってくることがあり、これがいわゆる個体差というものになる。
そういうこともあり、釘先のサイズが同一でも、根元の部分が多少でもブレてしまうと、まったくと言っていいほど違う機械となってしまうのだ。
結局メーカーはこの問題を収束させるために、機械代金の返却や営業補償、代替え機種の準備などを早期に発表し、「神対応」と言われるような対応を行なったのだ。
これによりこの機械は市場からゆっくりと消えていくことになったのだが、俺はどうもしっくり来ていない。
そもそもきちんと電卓を叩いて計算し、試し打ちを行なえば大体の赤字額は予想ができたはずだ。予想できないのはホール責任者の完全なスキル不足。そんないい加減な仕事をした奴らのせいで、この機械が市場から消えていく結果となってしまったことは業界にとって大問題だ。
以前も天下一閃などで大赤字を喰らい、台を止めてメーカーに対して文句を言うホールはあったのだが、ここまで大問題にはならなかった。それは何故かというと、飛び込み量を下げなくても傾斜を変えるだけで役物内の確率が変わり、出玉率が低下したから。
そういう対応ができたので、大きな問題にならなかったのだが、今回はまったく違う。この機械が天下一閃などと大きく違うのは、役物の個体差が傾斜などでは変わらないことだ。そのため、
「飛び込み量が出玉に直結」。
今までの一発台とは違って、どの台を打っても飛び込んでさえいれば、いずれは出る機械ということになる。
この一件があって、メーカーとしても大きな損出を出す結果となってしまった。おそらく、今後一切このような機械を作ることはないだろう。そういう意味でも、非常に残念で腹立たしい結果となった。
前回のコラムで触れた詐欺まがいの案内を受けて買ってしまった機械とは違って、「使いこなす気持ち」と「スキル」を持っていないホールには、今後軽い気持ちで一発台などを購入しないでほしい。
そして、よくよく自分たちのしてしまったことを反省してもらいたいと思う。
ではまた来週。
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日本代表がベスト16入りして一気に盛り上がったワールドカップも、ベルギーに惜しくも破れ、ワールドカップロス現象が起こっているようだ。
そんななか、パチンコ業界ではまた重大な事件が起きた。「CR今日もカツ丼」ロスである。
もうすでにご存じの方も多いとは思うが、改めて簡単に説明すると、新機種として導入されたこの機械が全国の平均データで4日間連続大赤字になったのだ。
早いホールでは導入2日目から故障の札を取り付け、機械を止める事態になった。そのようなことが全国のホールで行なわれていたのである。そして、現在は撤去してしまったホールすら見受けられる。
なぜこんなことが起きたのだろうか?
当初、この記事を書くことを躊躇したのだが、時を同じくして前回のコラムで書かせてもらったメーカーの問題があった。同じくメーカーの問題だが、前回のコラムの問題とはまったく異質の問題だということを皆さんに理解して頂きたいという思いが強くなり、今回書かせて頂くことにした。
まずこの機械のスペックを振り返ってみよう。
【CR今日もカツ丼】
大当たり確率…約1/9
大当たり出玉…約4100個
等価交換での初当たりまでの投資金額の分岐点…4100個×4円=16400円
等価交換での役物への飛び込み個数の分岐点…16400円÷9=1822円で1個
という計算になる。
多少の確率のブレが発生するのは当たり前なのだが、概ね約1800円で1個飛び込めば損益分岐点になる。よって、これよりも飛び込み個数が多いと、時間をかければ確実にホールが赤字になっていく。
肝心の飛び込みの部分だが、縦に開いた入口部分を突破すれば、玉は役物内に入っていく。
この機種はもともと玉が中央に寄りやすくなっていて、割と入口部分までは玉が向かいやすい。そのため入口部分の釘のサイズは致命的に重要で、いわば役物への入賞率をコントロールする役目、ひいては台の命運を決する命釘というわけだ。
その入口部分の釘のサイズだが、仮に髪の毛2本分くらい広がれば飛び込みは25%ほど上昇し、さらに髪の毛4本分では50%もアップする。
これがどれくらいのことかというと、通常なら大当たり到達までに約16400円かかるところを、飛び込みが25%アップする髪の毛2本分広かったとすれば約13100円、50%アップする髪の毛4本分ならば約10900円で済むことになる。単純に入口部分が髪の毛4本分広かったとすると、大当たりが出るたびに約5500円プラスになる計算だ。
こういう機械が新台で入荷されると、俺はミスがないようにとりわけ長時間飛び込みのテストを行ない、お客様が大負けすることがないように見極めていく。
セブン機と違ってサンプルが採りにくいこういう機械は、大変な作業ではあるが、とにかく時間をかけて確認していかなければならない。
しかし、こういった地道な作業をせず、ホール責任者のちょっとしたテスト打ちで済ませた結果、飛び込まないから釘を大きくアケたというホールがゴロゴロあった。
仮に髪の毛4本分広かっただけでも大変なことになるのに、ガツンとやってしまえば夢の5万発オーバーコースになるのは確実だ。ちなみに、このガツンというサイズは、それでもたった1mm程度の話である。
結果、想定外の大赤字を出してしまったホールが多数あった。そこまでは別にいい。それを踏まえて、翌日からゆっくりと釘をシメればいいだけの話だから。
ところが焦ったホールが色々と釘をいじくりまわし、結果2日目も大量出玉が止まらないという事態になった。その後も止まらず全国データでは4日間連続でこの機種は赤字となっている。
問題はここからだ。
完全に赤字を取り戻せないと悟ったホールはこの機械を欠陥台だと決めつけ、札止めして機械を動かさなかったのだ。
そして、そのホールはメーカーに対して「赤字を補填しろ」だとか「機械を返すから代金は払わない」とか言い出したのだ。
当たり前だが全てのホールがこんなヤカラな対応をしたわけではなく、こんなことをしたのはほんの一握りのホールだけだ。
しかし、この部分においてはメーカーにも多少の落ち度はあった。
今は見た目はプラスティックに見える樹脂の盤面を使うことが多くなっているのだが、この機械はいわゆるベニヤの合板に釘が打ち付けられた機械だ。
このベニヤと樹脂の盤面の大きな違いは、釘の打ち込み位置の精度にある。樹脂はもともと穴が開いているところに釘を打ち付けていくのだが、ベニヤの盤面は直接釘を打ち込んでいく。そのため、ベニヤの硬さや水分の含有量により若干釘のサイズが変わってくることがあり、これがいわゆる個体差というものになる。
そういうこともあり、釘先のサイズが同一でも、根元の部分が多少でもブレてしまうと、まったくと言っていいほど違う機械となってしまうのだ。
結局メーカーはこの問題を収束させるために、機械代金の返却や営業補償、代替え機種の準備などを早期に発表し、「神対応」と言われるような対応を行なったのだ。
これによりこの機械は市場からゆっくりと消えていくことになったのだが、俺はどうもしっくり来ていない。
そもそもきちんと電卓を叩いて計算し、試し打ちを行なえば大体の赤字額は予想ができたはずだ。予想できないのはホール責任者の完全なスキル不足。そんないい加減な仕事をした奴らのせいで、この機械が市場から消えていく結果となってしまったことは業界にとって大問題だ。
以前も天下一閃などで大赤字を喰らい、台を止めてメーカーに対して文句を言うホールはあったのだが、ここまで大問題にはならなかった。それは何故かというと、飛び込み量を下げなくても傾斜を変えるだけで役物内の確率が変わり、出玉率が低下したから。
そういう対応ができたので、大きな問題にならなかったのだが、今回はまったく違う。この機械が天下一閃などと大きく違うのは、役物の個体差が傾斜などでは変わらないことだ。そのため、
「飛び込み量が出玉に直結」。
今までの一発台とは違って、どの台を打っても飛び込んでさえいれば、いずれは出る機械ということになる。
この一件があって、メーカーとしても大きな損出を出す結果となってしまった。おそらく、今後一切このような機械を作ることはないだろう。そういう意味でも、非常に残念で腹立たしい結果となった。
前回のコラムで触れた詐欺まがいの案内を受けて買ってしまった機械とは違って、「使いこなす気持ち」と「スキル」を持っていないホールには、今後軽い気持ちで一発台などを購入しないでほしい。
そして、よくよく自分たちのしてしまったことを反省してもらいたいと思う。
ではまた来週。
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