「地球の日本っていう場所にはパチスロというおもちゃがあって、毎日そればっかりやってたんだ!」と、俺は言う

シリーズ名
町民プールで鮪釣り (毎週火曜日更新)
話数
第98回
著者
ラッシー
それは、つい先日の朝のことだった。

ホールへ向かおうと、朝早くに家を出た。案の定、気温は低く、3分と歩かないうちに指先の感覚がなくなった。開店直後は手がかじかんでいて、レバーを叩くと激痛が走ることもある。これだから冬は嫌いだ。冬なんてなくてもいいのに…そう思った刹那、ビルの陰を抜け、日光が全身に降り注いだ。


「ああ…あったけぇ…」


この瞬間、スゥ〜っと何かが脳内から退いていった。


「俺は一体、なにをやっているのだろう…」


駅へと向かう人の波。言うまでもなく、みな一様に仕事場へと向かっている。それなのに36歳、一児の父である俺ときたら…。空を見上げると、太陽はそんな俺にも分け隔てなく熱と光を与えていた。なんという寛大さだろう。

陽が当たれば暖かい。これがどれほどの奇跡で、どれほど有り難いことなのか、みなさんは理解しているだろうか——。


人工の光が少なく、空気の澄んだところで夜空を見上げると、星空が見えるよね。あれ、ほとんど恒星なんですわ。惑星で見えるのは、せいぜい同じ太陽系のヤツだけ。惑星や衛星は自ら光を放たないから、地上から見えないの。

じゃあ「恒星いっぱいあんじゃん! 太陽なんて有り難くもなんともねーよ!」と言われそうだけど、そうじゃない。恒星にも様々なタイプがあるんですわ。

たとえば赤色矮星。質量は太陽よりずっと小さく、核融合反応もゆっくり。当然、放つ光も弱いため、近くの惑星に住んだら昼でも暗い。よっぽど近くの惑星に住まない限り、陽に当たっても「あったけぇ〜」なんてならない。

青色巨星なんかは全く逆。質量は太陽よりずっと大きく、ギンギンに核融合反応してやがる。燃料の消費が激しいから、寿命は太陽よりずっと短い。仮にちょうどエエ位置(ハビタブルゾーン。日本語にすると生命居住可能領域)に惑星があっても、生命が成熟して文明を築く頃には恒星としての寿命が尽きてしまう。


銀河に、そして宇宙に恒星は数あれど、太陽さんほど「ちょうどエエ恒星」はなかなかナイ。その太陽さんから絶妙な離れ具合で、大気を宿した岩石惑星が「地球」なのである。

同じ岩石惑星の水星・金星は太陽さんに近すぎて、日中の平均気温がえげつない。水星は400度前後で、金星は500度くらい。とても「あったけぇ」なんて言っていられない!

火星の平均気温は-50度くらい。しかし、真夏の日中なら27度くらいになることも。「おっ、ワンチャンあるな!」と言いたくなるけど、残念ながら陽に当たると大量の放射線を浴びてしまうのだ。とてもじゃないけど日光浴なんてしていられない!

そう、地球と太陽さんは奇跡、奇跡and奇跡なのである。もちろん天の川銀河の中にも同じく絶妙な関係の恒星と惑星が多数あるだろうけど、やはりこれだけ素晴らしい環境はなかなかないと思う。

そんな奇跡の星の中で、治安が良くて裕福な国「日本」に生を享けたわけですわ。この銀河に、いやこの宇宙でこれだけ恵まれた生命体がどれだけいるだろう。超絶ウルトラアルティメットラッキーなんですわ!!


生涯を終え、天国みたいなところに行ったとしよう。そこで別の恒星系出身の友達ができた。そいつに「きみ、その地球でどう過ごしてたの?」と言われたとき、俺はなんと言えば良いんだろう。

否、とっくに答えは出ている。「俺はパチスロを打ってたんだ!!」って言ってやるんだ! 「地球の俺が住んでた日本ってとこにはパチスロっていうオモチャがあって、もう毎日毎日そればっかやってたんだ!」って言ってやるんだ!


「ええ…僕の星は寒くて暖をとるだけで苦労したのに。200年も火を焚いて過ごしたのに…」。


友達はそんな風に言うかもしれない。すまんな、俺はパチスロを打ってたんだわ!


こんなコラムに迷い込んで来る人は、相当パチスロが好きに違いない。言ってやろうぜ、別の恒星系のヤツらに。「パチスロめっちゃ面白いんだぞワレ!」って!

そしてこれを読んでる若者よ。もしもパチスロ雑誌のライターとかパチスロ番組の演者になりたいなんて考えているなら覚悟せえよ! 「奇跡なんぞ知るか! せっかくの人生? お説教なんてノーサンキュー!」。それくらいの覚悟がなくてコッチに飛び込むと苦労するよ。

とはいえね、やっぱり太陽さんと地球への感謝は忘れちゃダメ。みなさんも陽の光を浴びたら、それが奇跡なのだと思いだしてくださいな。