神出鬼没で現れる『自称コンサルタントの徳さん』が店長から出る台の情報をもらっていた!?

シリーズ名
現役ホールマネージャーだけど、なんか聞きたいことある? (毎週日曜日更新)
話数
第90回
著者
アタマキタ
この被害女性に何と言ったら分かってもらえるのだろうか。とにかくこのままこちらに反感を持たれたまま斜に構えられていたのでは、本当のところは聞き出せない…。

迷った末にイチかバチかの勝負で「詐欺に遭われている」とハッキリと女性に言ってみた事が功を奏した。それにより、やっと俺のことが自分にとって敵でないと理解して頂けたようだ。そして、さっきまでの様子とは一変して、今度は少し恥ずかしそうな表情を見せたりもしつつ、話し始めた。

「こんな年になって、わたし騙されちゃって、欲深いというか、とっても恥ずかしいわ…」。そう言うと今度はこっちを見ている。現在の状況が理解できると、騙した相手に対しての怒りというより、彼女くらいの年齢になると羞恥心の方が勝るのだろう。

俺は女性の正面から真横に座りなおし、相手のペースに付き合いながら話を聞くことにした。

女性の話はまとまりがなく、バラバラとした感じだったが、大体の事は理解できた。まずこの自称コンサルタントという男の人物像についてだが、

・年齢は65歳くらい
・常連客の間では「徳さん」と呼ばれている
・中肉中背の一般的な体型で、口元に整ったヒゲを生やしている
・背筋はぴっと伸び、紺のブレザーの上下をいつでもきちんと着こなしている
・会話をするときはいつも店の外周りで、店内には入ってこない


そもそもなぜこの徳さんを知ったのかを女性に聞くと、「とある美人の女性客」の行動が噂になり、その噂がきっかけで知り合いになったというのだ。

その「とある美人の女性客」とは、つい最近になって店に通いだした韓国人の女性客の事だった。彼女の家は遠方にあるらしく、電車で約1時間ほどかけてうちの店まで遊びに来ては、「来るたびに海物語で随分と出していく」と常連客の間で噂になっていたというのだ。

常連客というのは、他のお客様の動向を本当によく見ているものだ。その美人客の様子が気になった常連客の1人が、隣に座って話を聞いてみようという事になったらしい。そしてその美人客が話した内容は驚くような内容であったのだ。

常連客が「随分といつも調子がいいね」と話しかけると、女性は明るい声で「最近は調子がいいんだ」と言って微笑んだという。そして「なんでそんなにいつも出る台に座ることができるの?」と愚問ともいえるような言葉を常連客が投げかけると、女性は「最近この店で知り合った人におすすめ台を教えてもらって、それを打つようになってから負けなくなった」と話したという。

常連客は「その知り合いってどんな人なの?」と続けて尋ねると、「この店のコンサルタントをしている人だ」という言葉が返ってきたという。そして女性はバッグからメモ紙らしきものを取り出して見せると、そこには赤い文字で台番号がズラズラと書いてあったらしい。

その常連客が見たメモ紙とは、今ここでこの話をしてくれている女性が持っていたものとおそらく同じようなものだと思う。

この美人客が言うには、初めて店に来た日の帰りに景品交換所の前でこの徳さんというコンサルを語る男に声をかけられたらしい。彼女が感じた徳さんの第一印象は、丁寧な言葉遣いをするやさしい笑顔の初老の紳士だったようだ。

徳さんは「私はこの店のコンサルタントをしており、店長から依頼を受けて海を打つ常連のお客様がなるべく勝てるようにお手伝いをしている」と話し始めた。そして「地域の1番店になるために120台ある看板機種の海の釘を開けて出玉も出しているのだが、たまに来るプロばかりに良い台を狙われてしまって、常連客がなかなか良い台に座れず、負ける事が店としてどうしても耐えられない…。そこで海を打つ特別な常連客だけに店が出すと初めから決めている台をどうにか教えてやってくれないだろうか、という店長の依頼に基づき動いているんです」と言ったらしいのだ。

そして徳さんは「今から店長と話をしてみるので、もしまだ時間があったらいくつか出る台を教えるから打ってみてもらえないか?」と。その言葉に対して美人客が頷くと、ゴソゴソとカバンを漁り、中からトランシーバーのようなものを取り出すや否や、耳にイヤホンを装着して店長と話をしているかのようにしゃべり出したという。

そして番号のようなものを念を押すように繰り返したかと思えば、時にはジョークを交え、店長とのトランシーバーでの会話を終えたという。そして徳さんの手の平には、美人客がその後に手渡された台番号の書いてあるメモ紙があったという。

美人客は間近で見ていた店長とのやり取りの様子から、ためらいながらも徳さんを信用しメモ紙を受け取ったという。しかし徳さんは「普段は店舗に入り込んでコンサル業務をしているから報酬は貰えるのだけど、今回のコレは突発的に起きた依頼のようなものなので報酬は貰えない」と言い、「申し訳ないがこの情報を5000円で買ってくれないか?」という話になったらしいのだ。そして、美人客は徳さんにお金を払ったという。

その後美人客はその教えてもらった出る台で大勝ちしたらしく、それからは徳さんがいる日は、いつも出る台の情報を徳さんに店長から聞いてもらって出しているのだという。徳さんの連絡先はまったく分からないため、いつでも会えるわけではないらしいが、神出鬼没でフラッとお店の周りで声をかけてくる事が多かったようだ。

そしていつしかその話を聞きつけた常連客の中では、「そんなことは嘘に決まっている」「たまたま出ただけだ」というまったく信じない人や、その話を信じて美人客に徳さんを紹介して貰って同じように稼いでいるという人もいたらしい。今回カウンターに怒鳴り込んできた女性も信じた人の1人だったのだ。


女性は再度恥ずかしそうな顔をして、前は徳さんからもらった番号で結構儲かっていたが、ここ1ヵ月近くまったく出ないという。そして今日も出ず、感情が高ぶり、ついついカッとなって文句を言いに来たのだという。結局女性は「自分の愚かさと浅ましさが起こしたことなので、もう忘れるからいい」とうなだれていた。詐欺行為なので被害届を出す提案もしてみたが、「みっともないからしたくない」と言って女性は帰っていった。

何とも釈然としない気持ちだ。これはれっきとした詐欺行為であって、このまま放っておけば、他の常連客もこれから被害に遭わないとも限らない事だ。

徳さんとかいうインチキコンサルタントを見つけ出して排除せねば…。それだけはハッキリしていると胸に決め、次なる方法を考えていた。

(つづく)



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