「ショップ」に爆弾が投げ込まれ現場は騒然…さらに追い打ちを掛けるある出来事が!?(後編)

シリーズ名
現役ホールマネージャーだけど、なんか聞きたいことある? (毎週日曜日更新)
話数
第37回
著者
アタマキタ
事件を能弁に証言するように映像が動き出した。一瞬の出来事も見落とすまいと、それはかなりのスローで再生されていく。

ただでさえ狭いショップだというのに、スーツ姿の警察の指揮官、ショップ店員と責任者、そして俺、さらに地元の警察署員数名という過密な空間が形成されている。各々が圧倒的なパーソナルスペースの侵犯に見舞われていたが、それを気にする余裕もないほどにモニター上で再現される映像に引きつけられていた。

ショップ店員が証言したように、爆弾らしきものを置いた男は、駅方面に向かって慌てて走っていく様子が確認できる。そしてその直後、男を追うようにして店員がショップから出ていく。


「…」

やはりどうもしっくりこない。単なる愉快犯ということなのか? もちろん本物の爆弾を仕掛けた可能性はあるが…。自分の中の"ひっかかり"を解消しようと、俺はむしろその後の映像を注視した。

「んっ!?」

ショップ店員が外に出た後、ドア口に違和感を覚える。ぱっと見だとドアは閉まっているようだが、完全に閉まり切らず、ほんのわずかながら開いているように見えるのだ。俺はすぐにモニターを指差し、その違和感を警察官に伝えた。

すると次の瞬間、まさに俺が指差したところに異変が発生する。誰もいないはずのショップのドアがゆっくりと開いていったのだ。その映像に呼応するように驚きの声がショップの中にこだましていく。


疑惑のドアは3分の1程度開いた状態でピタリと動きを止める。するとその直後、鋭く蠢く黒い影がショップの中に吸い込まれていった。すかさずここでショップ内を録画していたモニターに切り替えると、先ほどの黒い物影の正体が暴かれる。

それは…若い男のようだった。ショップ内を手当たり次第に物色している姿がはっきりと映し出されている。


映像を見る限り現金を盗もうと入ってきたに違いないが、不幸中の幸いとでも言おうか、大量の現金は金庫の中で管理されていたため奪われずに済んだ。さらに当面の現金も払い出し機の中に格納されており、それに手を付けられた様子もない。

映像で確認できる範囲内での被害は、500円玉の束で15万円程度の現金、それと電子ポット。なぜ電子ポットが奪われたのかは永遠の謎(苦笑)だが、究極の精神状態にもなると説明できないことも起こるのだろう。


映像が巻き戻され再びこのシーンを検証してみたものの、この男がどうやって侵入したのかは良く分からなかった。そこでビデオを最初から見ることに。

すると、例の爆弾男が窓口で喚いているその場面に、黒い影が…かすかに男の影が見えているように感じる。恐らく爆弾男と侵入男は共犯で、連携プレイでの強盗を企んだに違いない。

爆弾男が「ショップに爆弾を仕掛けた!」と叫んでその場から逃げ、店員が混乱しているところに付け込んで、黒パーカーの男はバレないように低姿勢で待機。そしてショップ店員が慌てて出ていくのを見計らい、ドアが完全に施錠されないところで足を引っかけて中に侵入したのだろう。


大体の手口や被害が確定したところで、現場検証のようなものが始まった。すると爆発物処理班と思われるチームの一人が、何かを手にしてこちらに向かってきた。そうだ! まだ爆弾の問題は解決していなかったのだ。

ショップ内にその男が入ってくると、手に持っている爆弾のようなものの説明を始めていく。どうやらレントゲン機にかけて調べていたようで、中身の写真も一緒に見せてくれた。

さて、爆弾と思われていたその筒状の中に入っていた正体は…船釣り用の大きなおもり。そして筒の上に装着されていたタイマー…のようなものは、一般的に市販されているものと同じ単なる機能的な時計ということだった。これで安全が確保されたとみなされ、封鎖されていた幹線道路と地下鉄の入り口は解放されることとなった。

振り返ってみれば2時間程度で収束した簡単な事件ではあったが、あの時のある種の興奮と緊張感は今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。大量のパトカーと赤色灯、非常線と傍観する人々。憔悴しきったショップのおばちゃん。あまりに能天気な主任(笑)。


パチンコ店のような日銭商売では、昔からこのような事件が多いのは事実だ。夜間金庫に売り上げを入金する時に襲撃されて命を落としてしまうという痛ましい事件も起こっている。実際俺自身も、夜間金庫への入金中、数人の暴漢に襲われそうになったこともある。

油断すればすぐ輩の食い物にされてしまう。そんな危険と常に隣り合わせなのだという危機感を持ち、日々気持ちを引き締めながら業務に取り組んでいる。


ちなみに、今はショップも対策をされていて、同じような手口で被害に遭うことはまず考えられないことだけは言い添えておこう。
(終)



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