店長が横領の罪を被せられた!? パチンコホールの裏事情(その1)
- シリーズ名
- 現役ホールマネージャーだけど、なんか聞きたいことある? (毎週日曜日更新)
- 話数
- 第30回
- 著者
- アタマキタ
どうもアタマキタでございます。今回は「人生最大の大勝負」なるお題を振られているので、そのテーマで書いていこうと思うが、大勝負ね…。
そもそもだが、パチンコ営業なんていうのは大勝負の連続だと思うよ。ちょっと間違えればすぐに崖っぷちに立たされるからね。ただ、そんなことをいちいち書いていたらキリがないということもあるが、核心に迫る内容になるとあまりに書けないことが多すぎるんだよな。ということで、その中でも書いても問題なさそうなネタを紹介していこうと思う。自身に降りかかったで出来事だ。
12年ほど前のこと。いつものように昼過ぎに会社へ着いた。いつもと変わらない、なんてことのない1日になるはずだったのだが…。
「入替の図面でも作るかな〜」と思いながら事務所の扉を開けると、見慣れない光景が目に飛び込んできた。部屋の奥に社長の姿があったのだ。当時、代表は本社にいることが常で、営業店舗に顔を出すなんてことはほとんどなかったため、「待ち合わせでもしてるのかな?」くらいの感覚。
何にせよ挨拶をせねばと近寄ると…戦慄が走った。一見して分かるように社長の様子がおかしい。怒髪天を衝くが如く、俺を睨みつけている。説明されるまでもなく何か大きな問題が発生していることは分かるのだが、とはいえその理由は皆目見当もつかなかった。
とりあえず、挨拶だけ済ませてその場を離れようとした…ところ、低いながらもはっきりと聞き取れる声が響いた。
「お前に話があんだよ」
吐き捨てるようにそう言われると、続けざまに「応接室に入れ!」と怒鳴られた。
これは…ただ事ではないな。
元々この社長は業界でも有名な危険人物で、とにかく気性が荒かった。気にいらないことがあればすぐにガラスの灰皿が飛んでくるし、営業成績の悪い店長などは、会議ともなれば名指しで「○○よ、頼むから死んでくれ」などと言われる。
それが日常であったため、この会社に店長として入社しても大抵の人間が1年も続かずに辞めていくのだ。そういう部分では非常に有名な会社だったため、仲間内ではあのホールだけには入るなと言われていた(苦笑)。
何でそんなところに俺が残っていたかと言えば、俺自身も社長とは色々なところでぶつかっていたのだが、店舗の実績を上げ続けたことで認められ、例外的に非道な扱いは受けていなかったからだ。その当時の俺はグループ全体の営業本部長となっていた。
応接室の椅子に座るなり、社長は開口一番とんでもないことを言ってきた。
「店のカギを返せ」
この業界において、これは『クビ』という宣告である。しかし俺はまったく状況が呑み込めない。意味が分からない。
戸惑いつつも、何かの勘違いだろうと思い、腰にぶら下げていた店のカギと警備用のタグを外して素直に社長に手渡した。
社長は俺から受け取ったカギをテーブルに放り出すと、俺を睨みながらこう言った。
「おまえ…150万近い金を横領しやがったな」
「え!? 横領!?!?」
まったく身に覚えがない話である。何のことなのか分からないと必死に弁明していると、2枚の紙がテーブルに置かれた。そのうちの1枚は、12月31日の大晦日の景品データだった。
景品データというのは、当日の景品カウンターで交換されたものが記載されたものだ。そこには、金景品はもちろんのことたばこやジュースなどの細かいものまですべて記載されている。
社長は、そのデータに打ち出されていた2500玉景品(1万円相当)のところを指さすと、さらに怒りのボルテージを上げた。
「この日の2500玉景品が160個出ているな? 実際には10個しか出ていないのにどうしてこういうことになっているんだ。それから…」
続けて別の1枚の紙を突きつけてきた。
「ここにあるのは、従業員から聞き取りを行なったメモだ。それによると、この日はアタマキタの指示で、営業終了後に機械から玉を出して玉計数機に流している。その後、カウンターで2500玉の景品を打っておいてくれとお前に言われ、言われた通りにしたとアルバイトが認めている。どうやっても言い逃れできないぞ」
「あ…」
思い出した。確かにそれは俺がやったことだった。
…
…
…
12月31日。この日で12月が終わるわけだが、月の利益が予想以上に取れてしまっていた。こんなことを言うとおかしいと言われるのだが、俺は取れすぎた利益に対して嫌うところがあり、想定通りに出せなかった分に関しては月末に一斉放出するようにしている。
そしてその年の大晦日も同様に対処したのだ。可能な部分はすべてお客様に還元しようと、スロットは高設定をバカバカと入れ込み、パチンコも釘をガッツリと開けてグランドオープン並に調整。おそらく、赤字金額は300万円くらいを目標にしていたはずだ。
ところが、この日は機械が悲しいくらいに反応せず、300万の赤字どころか、15万円程度の黒字で終わってしまった。
このままでは12月の利益が還元されないで終わってしまう。そう考えた俺は、閉店後に150万円分の玉をジェットに流し、その分を景品に交換したことにして一時的にプールした。あくまで一時的なもので、かつデータ上だけの処理である。
そして迎えた元日。最高の客入りだった上に、前日以上に力を入れた結果、店は大盛況。お客様も大満足だったように思う。そして俺は予定通り、31日付で追加処理していた景品を残らず全て返品処理。当日のデータとしては放出分の赤字を相殺する形となったため、見た目としては平穏な一日となった…はずである。
これはちょっとヤバいことのように思われるかもしれないが、伝票等を偽造をしているわけではないし、同一決算期内の処理で帳簿上何かしらのズレが出るわけでもない。倫理的にどうかというのはあるが、金額的には完全に行って来いであり、会社に不利益をもたらしたわけでも、ましてや横領などではない。
そもそもこのやり方は会社から教えられたわけだし、しかもこのような場合はいつも報告を上げていた。この時も同様である。それなのに、なぜいまさらこのことで追い詰められなければならないのだ…。
この時は分からなかったが、後日、色々と真っ黒いものが見えてきて、全てが腑に落ちたよ。そして、この先はヤバいことだらけで書けないことが多いんだよな。困ったな(苦笑)。
いずれにせよ、俺はこの日で12年間働いた会社を後にすることとなる。まさに、晴天の霹靂だった。何も先が見えていない状態で突然追い出されたのである。
書けないことも多く色々中途半端になってしまったが、俺の人生の中ではこの出来事が、大きな決断を迫られた場面であり、結果的には大勝負だったように思う。
そもそもだが、パチンコ営業なんていうのは大勝負の連続だと思うよ。ちょっと間違えればすぐに崖っぷちに立たされるからね。ただ、そんなことをいちいち書いていたらキリがないということもあるが、核心に迫る内容になるとあまりに書けないことが多すぎるんだよな。ということで、その中でも書いても問題なさそうなネタを紹介していこうと思う。自身に降りかかったで出来事だ。
12年ほど前のこと。いつものように昼過ぎに会社へ着いた。いつもと変わらない、なんてことのない1日になるはずだったのだが…。
「入替の図面でも作るかな〜」と思いながら事務所の扉を開けると、見慣れない光景が目に飛び込んできた。部屋の奥に社長の姿があったのだ。当時、代表は本社にいることが常で、営業店舗に顔を出すなんてことはほとんどなかったため、「待ち合わせでもしてるのかな?」くらいの感覚。
何にせよ挨拶をせねばと近寄ると…戦慄が走った。一見して分かるように社長の様子がおかしい。怒髪天を衝くが如く、俺を睨みつけている。説明されるまでもなく何か大きな問題が発生していることは分かるのだが、とはいえその理由は皆目見当もつかなかった。
とりあえず、挨拶だけ済ませてその場を離れようとした…ところ、低いながらもはっきりと聞き取れる声が響いた。
「お前に話があんだよ」
吐き捨てるようにそう言われると、続けざまに「応接室に入れ!」と怒鳴られた。
これは…ただ事ではないな。
元々この社長は業界でも有名な危険人物で、とにかく気性が荒かった。気にいらないことがあればすぐにガラスの灰皿が飛んでくるし、営業成績の悪い店長などは、会議ともなれば名指しで「○○よ、頼むから死んでくれ」などと言われる。
それが日常であったため、この会社に店長として入社しても大抵の人間が1年も続かずに辞めていくのだ。そういう部分では非常に有名な会社だったため、仲間内ではあのホールだけには入るなと言われていた(苦笑)。
何でそんなところに俺が残っていたかと言えば、俺自身も社長とは色々なところでぶつかっていたのだが、店舗の実績を上げ続けたことで認められ、例外的に非道な扱いは受けていなかったからだ。その当時の俺はグループ全体の営業本部長となっていた。
応接室の椅子に座るなり、社長は開口一番とんでもないことを言ってきた。
「店のカギを返せ」
この業界において、これは『クビ』という宣告である。しかし俺はまったく状況が呑み込めない。意味が分からない。
戸惑いつつも、何かの勘違いだろうと思い、腰にぶら下げていた店のカギと警備用のタグを外して素直に社長に手渡した。
社長は俺から受け取ったカギをテーブルに放り出すと、俺を睨みながらこう言った。
「おまえ…150万近い金を横領しやがったな」
「え!? 横領!?!?」
まったく身に覚えがない話である。何のことなのか分からないと必死に弁明していると、2枚の紙がテーブルに置かれた。そのうちの1枚は、12月31日の大晦日の景品データだった。
景品データというのは、当日の景品カウンターで交換されたものが記載されたものだ。そこには、金景品はもちろんのことたばこやジュースなどの細かいものまですべて記載されている。
社長は、そのデータに打ち出されていた2500玉景品(1万円相当)のところを指さすと、さらに怒りのボルテージを上げた。
「この日の2500玉景品が160個出ているな? 実際には10個しか出ていないのにどうしてこういうことになっているんだ。それから…」
続けて別の1枚の紙を突きつけてきた。
「ここにあるのは、従業員から聞き取りを行なったメモだ。それによると、この日はアタマキタの指示で、営業終了後に機械から玉を出して玉計数機に流している。その後、カウンターで2500玉の景品を打っておいてくれとお前に言われ、言われた通りにしたとアルバイトが認めている。どうやっても言い逃れできないぞ」
「あ…」
思い出した。確かにそれは俺がやったことだった。
…
…
…
12月31日。この日で12月が終わるわけだが、月の利益が予想以上に取れてしまっていた。こんなことを言うとおかしいと言われるのだが、俺は取れすぎた利益に対して嫌うところがあり、想定通りに出せなかった分に関しては月末に一斉放出するようにしている。
そしてその年の大晦日も同様に対処したのだ。可能な部分はすべてお客様に還元しようと、スロットは高設定をバカバカと入れ込み、パチンコも釘をガッツリと開けてグランドオープン並に調整。おそらく、赤字金額は300万円くらいを目標にしていたはずだ。
ところが、この日は機械が悲しいくらいに反応せず、300万の赤字どころか、15万円程度の黒字で終わってしまった。
このままでは12月の利益が還元されないで終わってしまう。そう考えた俺は、閉店後に150万円分の玉をジェットに流し、その分を景品に交換したことにして一時的にプールした。あくまで一時的なもので、かつデータ上だけの処理である。
そして迎えた元日。最高の客入りだった上に、前日以上に力を入れた結果、店は大盛況。お客様も大満足だったように思う。そして俺は予定通り、31日付で追加処理していた景品を残らず全て返品処理。当日のデータとしては放出分の赤字を相殺する形となったため、見た目としては平穏な一日となった…はずである。
これはちょっとヤバいことのように思われるかもしれないが、伝票等を偽造をしているわけではないし、同一決算期内の処理で帳簿上何かしらのズレが出るわけでもない。倫理的にどうかというのはあるが、金額的には完全に行って来いであり、会社に不利益をもたらしたわけでも、ましてや横領などではない。
そもそもこのやり方は会社から教えられたわけだし、しかもこのような場合はいつも報告を上げていた。この時も同様である。それなのに、なぜいまさらこのことで追い詰められなければならないのだ…。
この時は分からなかったが、後日、色々と真っ黒いものが見えてきて、全てが腑に落ちたよ。そして、この先はヤバいことだらけで書けないことが多いんだよな。困ったな(苦笑)。
いずれにせよ、俺はこの日で12年間働いた会社を後にすることとなる。まさに、晴天の霹靂だった。何も先が見えていない状態で突然追い出されたのである。
書けないことも多く色々中途半端になってしまったが、俺の人生の中ではこの出来事が、大きな決断を迫られた場面であり、結果的には大勝負だったように思う。