ホールMGとプロ軍団がバトル!「プロ軍団が牛耳った挙句捨てた南国育ちが全6!?」

シリーズ名
現役ホールマネージャーだけど、なんか聞きたいことある? (毎週日曜日更新)
話数
第24回
著者
アタマキタ
イベントはいまにも開始されようとしている。5分程前までまばらだったギャラリーは、21時を目前にして通路を埋めつくすほどに膨れ上がっている。もし空き台に設定6確定札が刺されば、残りの2時間程で勝負をかけようと思っているのだろう。

当時の機械であれば、取りこぼし覚悟で勝負してもお釣りがくるくらいの爆発力を持つものが多かったから当然かもしれない。爆裂機が極まった時代は時速5000枚なんて言われてたからな。

いずれにせよ、大盛況である。手前味噌ではあるが、お客様も満足されているようだし、自分たちもしっかりと準備して来た甲斐があるというものだ。視線の端にチラつく忌々しい白ブタ軍団さえいなければ最高の一日となったのだが…。


そんな中で館内のBGMはフェードアウトしていき、店内を静寂が支配する。もちろんスロット自体のサウンドは相変わらず鳴り響いているが、直前までの雑多な騒々しさ(良い意味でだけどな)と比べると、そう感じてしまうから不思議なものである。

しかしそう思ったのはほんの一瞬だった。カウンタースタッフがCDデッキにセットしていた一時停止を解除すると、大音量の「TRY ME」に煽られた店内の雰囲気はあっという間にギラギラした原色に塗り替えられていく。来店客の気持ちは「そわそわ」からもう一段も二段も進み、興奮へと昇華したようだ。


設定6プレートを携えた主任がゆっくりと該当台へ歩み寄り、お客様にひと声かけてからプレートを差して行く。このイベントは設定確認が可能であるが故に信頼性が高く、確定札を差されてもほとんどのお客様は設定の確認を求めない。まれに、あまりに出ていないと「間違ってるんじゃないか?」と確認される方がいる程度である。

主任が順番にプレートでの答え合わせをしていくと、その度に歓喜やどよめきが起こる。もう知ってるからとばかりに無視を決め込むお客さん、また、設定6じゃないと見切って失敗したのか、遠目で激しく落胆するお客さんなどもいて反応は様々であるが、概ねこのイベントを楽しんでくれていることは伝わってくる。その雰囲気を噛みしめながら、少し距離をおいて俺は主任の後を追い掛けていく。


そしていよいよ次は問題のシマである。南国育ちコーナーへと差し掛かった瞬間、またもや奴らが目に入った。「不満」という気持ちを顔で表すとこうなるんだというお手本のようないかめしさでお出迎えいただけるようだ。

大歓迎の気持ちはありがたいのだが、今にも喰ってかかりそうな顔つきで主任を睨み付けており、せっかくの雰囲気がブチ壊しではないか。俺はその空気の悪さに、正直ハラワタが煮えくり返っていたが、そのまま成り行きを見守ることにした。

主任が私からの設定6公開指示書を開くと、そこに示されていたメッセージは、

「323、324、325、326、327」

である。つまり、南国育ちは全台設定6なのだ。323番台と327番台以外の3台は、すでに午前中の段階で自ら設定6プレートを差しているので、発表は残りの2台のみだが。

早い時間から設定発表した3台はこの時点でかなりの出玉を叩き出している。設定を確認するまでもないだろうことは傍から見ても明白だった。そしてまだ札が差さっていない2台についても、他より出玉は少なめではあったものの、ガッチリ2箱程度は積み上げている。何時から打っているかは分からないが、まぁ悪くない結果なのではないだろうか。

主任が残った南国の2台のために設定6プレートを用意し、1台目(実質4台目)にプレートが刺さると、他の機種の場合とは明らかに違うどよめきと驚きの反応が響く。続いて反対側の端の327番台に2台目(実質5台目)の発表札が突き刺さると、さらなる歓声が溢れ出した。


白ブタは顔をみるまに赤くし、仲間うちで耳元で話しながらこちらの様子を窺っている。南国育ちコーナーの設定6発表を終えると、主任は端から一人ずつ声をかけていく。

「お客様のお座りの台は設定6となっていますが、ご確認はどうなさいますか?」

端のお客様がそれを断っているのが手振りで分かる。続けて隣の台へ。そして2台目のお客様も拒絶のサイン。続く3台目も設定公開をしないというのだ。

先程も触れたが、そもそも信頼度の高いイベントであり、一見して高設定だと感じられるコインの積み方をしているのだから、当然かもしれない。打っている者からすれば、寸暇を惜しんで1Gでも回すのが吉である。これをもって、「南国に6はない」と断言していた白デブの妄言は虚言だということが、ちょっとした諍いがあったことを知っているお客さんにも明白になったのではないか。


続いて主任は4台目のお客さんに声を掛けようとした。すると何を思ったか白デブが通路外からドカドカとシマ内に入り込み、台の後ろに回り込んだ。ちなみにこの4台目というのは、朝イチ、「高設定が1台もないからヤメろ!」と白ブタが常連客をヤメさせた台で、その後はずっと同じご年配のお客様が打っている。

ここでも主任は同じようにお客様に設定確認ができることを伝えたのだが、

「その設定なんちゃらっていうのはいったい何だい? おれはそんなの頼んでないぞ?」

という反応。こういうお客様も中にはいらっしゃる。このあたりは説明してすぐに理解してもらうのは難しいのだが、設定6を打っているお客様が損をするわけではないし、他の機種の設定発表もしなければならない。ひとまず主任は隣のお客様に移動しようとした。


その時だった。突然、白デブがそのご年配のお客様にすごい勢いで食ってかかり、襟首あたりをガッと掴みあげた。当たり前だが、あまりに突然のこと過ぎてお客様は何が起こったのか分からない。しかしこいつは構わず相手を罵倒するように怒鳴りつける。

「ジジイ! てめぇこの野郎! 設定6の確認をやれよ!」

そう喚きながら、老人の襟を掴んでさらなる勢いで引っ張っていったのだ。なんという卑劣漢だろうか。

さすがにこれには参ったようで、主任に対して「この人の言っている設定とかっていうのをやってあげてくれないか?」と、半強制的に言わされてしまった。


主任はこちらにアイコンタクトを取ってきたが、俺は構わないという反応を返す。主任はお客様に席から立って頂くよう促し、台を開けてから奥のボックスに設定キーを差し込む。白ブタとその仲間たち、そしてこのデブにヤメろと言われて台をブン投げた常連客が見守る中で設定キーはひねられた。

そしてリール窓の下に点灯した数字は、「6」。言わずもがな、設定6である。

それを見た白ブタは信じられないものを見たというような顔付きでその場に立ち尽くしている。自分の拠り所を失った人間というのは、ああいう表情になるのだな…などと呑気に思った次第。

しかしそんな自分とは対極にある白ブタの周囲はにわかにざわつき始める。それもそのはず、高設定じゃないからヤメた方が良いとそそのかされ、まんまと信じてしまった客が、猛然と奴に向かって吠えまくっている。あんな奴のことを信じる方もどうかとは思うが…。


とにかく、もうここにとどまる理由はない。お客さんには残り時間を有意義に使ってもらわなければならないから、邪魔をするわけにはいかないだろう。

おれはすかさず奴に近付き、表に出るように伝えた。取り巻き連中もぞろぞろと出てくる。そしてその様子を面白がっていた一部のやじ馬たちも表までついてきた。
(つづく)



質問を送る