ホールMGが自称プロ「白ブタ軍団」とバトル!一気に決着をつけようとしたトコロ…

シリーズ名
現役ホールマネージャーだけど、なんか聞きたいことある? (毎週日曜日更新)
話数
第22回
著者
アタマキタ
ささやかな至福の時を邪魔されたと思うと、沸々と怒りが込み上げてきた。自分の作業は夜から早朝までがコアタイムとなるため、仕事のスタートは昼過ぎになることが多い。つまり世間で言うところの朝食は、自分の生活リズムに置き換えるとデブ街道まっしぐらの深夜飯である。そのため朝食を摂ることはめったにない。

しかし、パンとコーヒーとか、白飯と納豆と卵焼きとか、優しい日差しと落ち着いた空気感の中で摂るシンプルな食事というのは、見た目の質素さ以上に精神に豊穣を与えるものだ。少なくとも、自分にとってはそういうものである。

そしてこの日は近所のお気に入りの喫茶店で久々のモーニングを堪能しながら漫画を読み、ゆったりした時間を味わっていた。そんな状況で、店に戻ってきてくれという主任からの非情の連絡である。

もちろん原因は、早朝に揉めたプロ連中の頭であるらしい「白ブタ」だ。眠りについたばかりのところでトラブルで起こされるのもそれはそれで相当こたえるのだが、朝の件は比較的穏便に収めたという気持ちがあったため、この状況は余計に腹に据えかねた。


店に着くまでのあいだ、自分がパチプロだった頃のことを思い出していたのだが、今の似非プロのぬるま湯的思考には違和感を禁じ得ない。自分の現役時代は『他人に依存しない』ということをポリシーにしていたため、強烈なギャップである。かつての自分は、「パチプロというのは常に孤独な存在でなければならない」「社会の底辺で生かされているということを忘れてはならない」と、常に言い聞かせていたものだ。

ただ、誤解しないで欲しい。決して自身のプライドを捨てろということではないし、乞食精神で生きる屍と化すべきだというわけでもない。要は、分をわきまえるべき、ということに尽きる。

ジェネレーションギャップと言われればそれまでだが、大した努力もせず、それほどの知識もなく、精神が未熟で感性も備わっていない、そのくせ金に対しては執拗に粘着し、他人の迷惑を顧みず自己中心的、そんな一部のパチプロ連中は、ヘドが出るくらい嫌悪している。まぁどの世界でも似たような輩はいるだろうし、誰にとっても迷惑千万な存在だろうが…。


自分の原点とも言うべき情念が脳内を埋め尽くすと、気付けば完全に戦闘モードに切り替わっていた。

店の自動ドアが開ききるのを待たず扉を手でこじ開けると、のけぞるような形で椅子に腰掛け、我が物顔で通路を塞ぐ白ブタとその取り巻き連中、そして両手を前に組んで今にも泣きだしそうな表情の主任の姿が飛び込んできた。

「こりゃあ思ったよりも深刻な状況なのか…!?」

気を引き締めゆっくりと奴らに近付いていくと、仲間がこちらに気が付いたようで、白ブタに耳打ちをするのが目に入った。しかし奴はそこから動かず、椅子に座ったまま鬼の形相でこちらを威嚇してくる。

白ブタは威嚇して強気に出ていれば状況を有利に展開できると思っているのだろう。まさに主任には功を奏したのだから、調子に乗っても仕方がないのかもしれない。朝食の怨みに満たされた俺の前でそんなものは無力なのだが…。


さて、どんなトラブルでも同じだと思うのだが、とにもかくにも肝心なのは初動である。そこで俺は、無言かつ淡々と白デブの腕を両手で掴み上げ、椅子から本人を引っ張り上げた。

奴の頭の中には俺のこの出方は予想もしていなかったのか、白デブは面喰らったまま自分の体重に翻弄されてよろける始末。そこで俺は奴を抱えながらすかさず壁側に追いやった。これを今風に言うと、『壁ドン』ってことになるのかな(苦笑)。


白デブは「何すんだよこの野郎!」と喚いていたが、俺はそれには構わず掴み続けていた右手をさらに強く握り直し、淡々とこう告げた。

「ここは通路だからさ、さっきみたいな態度で座られてると邪魔なんだよ。打たねぇなら他所で立って待ってろよ?」

しばらく睨み合いが続いたが、腕の痛みが限界に来たのか、奴は全身で俺の手をはねのけてその場を逃れた。しかし店を出るではなく、階段を少し下ったところから憤怒の相を浴びせてくる。これで終わりにしてもよかったのだが、もし奴がしつこく絡んでくるようなら、パチンコを楽しみに来られている他のお客様に迷惑になる。俺はこのまま一気に決着をつけようと、白ブタに表に出るように促した。


白ブタを先に歩かせ、俺がその後方から階段を下っていくと、ゾロゾロと取り巻きどももついてきた。ここで俺は一旦足を止め、試しにこの4人に睨みを利かせてみた。すると、階段を下りる4人の足もぴったりと止まり、ひるんでいる様子がありありだ。これを見て、白デブ以外で骨のある者はいないだろうと見切りをつけた。こいつらが俺に逆らってくることはないだろう。

そうなると、前を歩く男一人をきっちり型にはめれば話は終わる。先を歩く白デブが店に外に出たところで、

「そっちじゃない、こっちだ」

と声をかける。俺は奴を店の軒下に導いた。

そこは、来店されるお客様の目につきにくい場所であり、なおかつ防犯カメラが設置されている。もしもこいつがトチ狂って俺に襲いかかろうもんなら、大げさにコケて見せて暴行傷害で訴えるなんてこともできるかもしれない。それぐらいのリスクヘッジはさせてもらおう。


「で? 俺に何の用だい」

俺がとぼけた口ぶりで話すと、

「てめぇ! 客を騙してんじゃねーぞ!」

白ブタはこちらをを睨み付け、つんざくような声で吠えつける。

「そんなんじゃ会話は成り立たねえぞ。そもそも何のことを言ってんだ? あのさ、面倒だからもう帰ってもいいか?」

おちょくったように笑いながら話す俺にイラツキを増したのだろう、奴は更なる怒声を張り上げる。

「今日はスロットのイベントだろうが! 必ず各島に設定6を入れるはずなのに1台も入ってねぇじゃねーか! 俺らはわざわざ前日から並んで朝イチで南国の島で打ったのに、設定6が1台も入ってねぇってことは、客を騙している詐欺行為じゃねぇか!! 警察呼ぶぞこの野郎!」

さすがにこの大声である。何人かの常連が気づき、足を止めて何事かとこちらを見ている。


前回も触れたが、4号機の南国育ちは連チャン時の挙動が設定6だけ特殊で、そこを見ていけば設定6については比較的看破しやすかった。それは、初当たりの半分程度で1ゲーム連が発生し、そのほとんどが3連チャンで終了するというものだ。また設定6に設定変更した場合は、朝イチ一発目のボーナスで1G連が発生しやすく、遅くとも2発目のボーナスまでにはほぼ1G連が発生するという特徴もあった。

白デブは得意気に「設定6だと朝イチはボーナスが3連で終了する場合がほとんどなんだよ」とご高説を唱えておられる。そんなもんはこちとら百も承知なのだが…。

「今日は5台ともBIGを引いたのに、そんな台は1台もなかった! 要は6がないってことだろうが! 客を騙してボッタクリじゃねーか!」

周りに集まり始めた常連客に聞こえるようにわざと大声で話し、皆の関心を集めていることに得意気である。店の評判を落とそうとしているのかもしれないが、俺はこのセリフを聞いて半笑いである。

「あのなぁ、各島に設定6が入ってるって誰が言ったんだよ? 南国育ちに設定6を入れるって誰が言ったんだよ? 大体さ、プロだかなんだか知らねえがよ、看破が簡単な南国育ちを5人で占拠しといて6がないと思ったら今度は店長出せってか? お前らナメてんのか! 今のパチプロってのはその程度か!」

俺のこんな姿は常連も見たことがなかったろう。誰もが静かに成り行きを見守っていた。


「それにしても本当にお前らはアホだな。そもそも設定6ならちゃんと入ってるぞ? ちょっとついて来いよ」

俺はこう続け、奴らを店内に促した。

途中で「設定6確定」のプレートを握り、俺は南国育ちのコーナーへと向かうのだった。
(つづく)



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