ゴト師との戦いは決着したと思ったが・・・
- シリーズ名
- 現役ホールマネージャーだけど、なんか聞きたいことある? (毎週日曜日更新)
- 話数
- 第9回
- 著者
- アタマキタ
前回までゴト師の長い話に付き合ってくれてありがとう。実はあの後も続きがあったのだが、話が長くなってしまったので、ひとまず区切りをつけさせてもらったのだ。
本来の企画趣旨である質問も沢山いただいており、今回こそその回答だと思っていた読者さんには申し訳ないが、もう少しだけ付き合っていただきたい。
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タンクトップは数人の警察官に囲まれ、抵抗するでもなくパトカーの中へと吸い込まれていった。
俺はその様子を窺いながら、ひと仕事を終えた感慨に浸ろう…としていたのだが、どうも様子がおかしい。駐車場からパトカーが出ていく気配がないのだ。車内で簡単な手続きなどしているだろうか?
そしてそのまま10分ほど経ったろうか、いつ出発するのかと訝りながらも他のスタッフと雑談をしていると、かすかにサイレンの音が耳に入ってきた。そして、遠くで発せられたはずのその警告音は、ほどなく誰の耳にも明確に認識されていく。
普段であればなんてことのないサイレンだが、この時の俺は少なくない不安を感じていた。そして段々と大きくなるサイレンの響きが俺の懸念をも増台させていった。ここに向かってきているのではないか?
その不安はまんまと的中する。「緊急車輌入ります」のアナウンスと共に救急車が駐車場に入ってきたのだ。そしてほどなく、警察に促され、パトカーを降りて救急車に乗り換えるタンクトップの姿が見えた。
その刹那、俺に向けられた深い憎悪の視線が光る。それに反応するように、我が身に危険を知らせる信号が全身を駆け巡っていった…。
2人の警察官がこちらに向かって歩いて来るのが見える。既に十分過ぎるほどに嫌な予感はしているが、2人の足取りや表情から、その予感は確信へと昇格していく。これはひと悶着あるだろう。
「先ほどパトカーに連行した者がね、頭が痛いって言っているんですよ。それで、良く見たら後頭部から流血してましてね。これはどうしたの? と聞いたら、こちらの店員にやられたって言うわけですよ」
警察官は続ける。
「それで話を聞かせてもらおうと思ったんだけど、その…暴力を振るわれた方って、どちらにいますかね?」
(まずいな…このままだとこちらまで引っ張られてしまうかもしれない)
咄嗟に後ろにいた主任の左腕の上腕筋辺りを強く掴みながら手を挙げさせた。不意を突かれたからか余程痛かったのか、主任はその場で尻もちをついてしまう。
不安そうにこちらを見上げる主任にウインクで合図を飛ばし、俺は彼を両手で優しく抱えた。
「主任、どうしたんだ?」
疑心暗鬼の表情は残っていたが、しっかりした声で「何でもありません」という返答がかえってきた。
ここで俺は警察官に向けて話を始める。
「ご迷惑をおかけしてすみません。対応したのはこの者です。ただし、もちろん暴力などは振るっておりません。私が話を聞いている最中、むこうがいきなり飛び出して逃走しようとしたものですから、彼は逃がさまいとして本能的に奴の前に立ちはだかったんです。そしてそれでも暴れて逃げようとするものですから、その時にちょっと接触があったのでしょう。こちらが手を出したなんていうことは決してありません」
我々は一切嘘は言っていないが、警察官の疑念は晴れていないようだ。
「そうは言ってもね? 相手もあの通り怪我してるんだよね…」
俺は後ろにいた主任の横に回った。
「接触については、相手が無理に逃げようとして暴れたのが原因ですよ? それに…これは言うまいと思っていたのですが、ここにいる主任だって奴に怪我させられてるんですよ?」
ここで俺は主任にワイシャツを脱ぐように促す。するとどうだろう、主任の左腕の辺りに赤く引っ掛かれたような跡がはっきり付いていた。それはそうだ。今しがた、俺が思いっきり上腕筋を捻り上げたばかりだからな。
警察官が顔を近づけてその様子を確認する。
「こりゃあひでえな。真っ赤に腫れ上がってるじゃないか」
1人の警察官が思わず口に出してしまうほどのものである。
主任は俺の思惑に気が付いたらしく、俺が赤く腫れ上がった主任の腕に手を添えようとすると、「痛い痛い」と大げさなリアクションが返してきた。
この怪我は俺がこしらえたものだが、だからといってこちらが全く無傷ということではない。タンクトップもかなり暴れていたからだ。しかしこの状況でそういうことを必死に訴えるよりも、目に見える印象がいかに強いかということを、俺は経験的に知っている。だから手っ取り早い状況を敢えて作ったのだ。
そして俺は警官に明言した。
「今回の件ですが、私たちがゴト師に対して暴力をふるう理由はありません。それでも彼がこちらを訴えるというのであれば、主任も怪我をさせられたので、こちらも徹底的にやらせてもらうことになります」
2人の警察官はお互いの顔を見合わせ、少し離れたところまで歩いて行った。何か相談をしているようだ。
しばらくして1人がこちらに戻って来た。
「お話は分かりました。とりあえずこれで引き上げますが、また後で連絡するかもしれません」
これでようやく去って行った。
その後、突然上腕筋をひねりつぶすように掴んだ主任に平謝りをしたのは言うまでもない。
それから何日か経った頃、警察署から電話がかかってきた。
まず、タンクトップの頭の怪我についてだが、これはかすり傷程度なので何の問題もないということだった。こちらが殴ったりなどしたわけではないが、それでも何もなかったということでほっとしたことを覚えている。しかし気になるのは奴の意向についてだ。
警察はこう続けた。
「『訴えを続けるということであれば相手側の事情もじっくりと聞かなければならず、結果として長期に渡って拘束される可能性が高い』という旨を伝えたところ、すんなりと訴えを取り消しました」
良かった。我々にとってはこれで肩の荷が下りたと言える。
更なる朗報ももたらされた。タンクトップと一緒にゴトを働いていた相棒の小太りが即日逮捕されたという。どうやら小太りの方は不法滞在の中国人で、ちょうど所轄が追っていた中国マフィアの一味だったらしい。そんな事情もあったため、警察が躍起になって調べを尽くした結果、奴らは遂に起訴されたということだった。
聞くところによると、こういったゴト事例は、これまでは逮捕しても証拠不十分で釈放せざるを得ないという場合がほとんどらしい。そういう意味ではこの事件は全国でも珍しいケースとなったようである。結果、この不良外国人は強制送還、タンクトップは懲役刑を喰らったとのことだった。
この一件では、最後に冷や汗をかかされたが、昔の教訓が役に立った…と言えるのかもしれない。それは、警察は「喧嘩両成敗」という言葉に異様に弱いというものだ。
若かりし頃、こんなことがあった。
数人のヤクザが、表に置いてあった鉄製ののぼり立てで、店の前で女性2人に殴りかかっていたのが見えた。俺はそれを見て咄嗟に飛び出していた。このまま殴られ続けたらこの女は殺されると直感的に思ったからで、恐怖を感じる間もなかった。
無我夢中で何とかヤクザ連中から"凶器"を取り上げた…までは良かったのだが、ここでヤクザの怒りの矛先が俺に向けられてしまったのだ。しかもワケが分からないのだが、先程までやられていた女も含め、全員で俺に殴り掛かってきたのである。
これでは俺もひとたまりもない。あちこちから蹴られ殴られ、みるまに顔面は腫れ上がっていく。すると、この異変に気付いた店員が店の中から飛び出してきたことで、結果的に大乱闘に繋がってしまった…。
間もなく警察が来てヤクザは所轄に連行されていったのだが、当然、このままでは怒りが収まらない。現場を取り仕切っていた課長に、全身の痛みをこらえて俺は強く訴えた。
「あいつら、表で喧嘩してたから俺は止めに入ったんです。そうしたら今度は全員でこちらに向かって来たんですよ! 俺はパチンコ店という立場もあるので一切抵抗せずに殴られましたけど、このままでは納得がいきません。奴らを訴えますよ!」
すると、課長からは思ってもみない言葉が返ってきたのだ。
「悔しい気持ちは良く分かるよ。でもさぁ、相手も足が痛いって言ってるんだよ。見たら腫れ上がってるんだよね。どうしても訴えるというなら、店長にも来てもらって一晩泊まってもらうことになっちゃうよ?」
こんな状況で脅しとは! 俺は思わず課長を睨みつけ、さらに迫った。
「どちらが悪いか分かってますよね? 何でこちらがそんな思いをしなくてはならないんですか!」
しかし課長はまったく怯まない。こういった状況には飽きるくらい立ち会ってきたのだろう。
「分かってるよ…店長。悔しいだろうよ。だけどね、これがルールなんだよ。喧嘩両成敗だから」
何だよ喧嘩両成敗って! 馬鹿にするんじゃねえよ! 俺は喧嘩を止めに入ったんだ! そう強く思ったが、課長の言いっぷりは、決して自分の訴えを邪険にするようなものではなかった。そして、
「悪いけど俺を信じてくれ。必ず格好は付けさせるからよ」
そう言われ、渋々引き下がることになった。しかしもちろん納得などできるはずもない。しばらくは悔しい思いにかられながら過ごすことになる。
数日後。その課長から連絡があって、店に顔を出したいとのことだったので、カウンターで待っていた。
すると先日のヤクザ7人が、手錠とロープで繋がれた状態で、ズラズラと営業中の店内に入ってきたではないか。そして課長の指示でカウンターの前に一斉に正座すると、一人ずつ端から「すみませんでした」と謝ってきたのである。
正直、これには参った。実に迷惑極まりない行動ではあったが、しかし俺はそれを警察官の誠意と捉え、気持ちを収めることにしたのである。そんな経験があったから今回の一件を乗り越えられたのかなとも思う。
まぁ、本音を言えば、金輪際ゴト師などとは戦いたくないものだ。
(完)
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本来の企画趣旨である質問も沢山いただいており、今回こそその回答だと思っていた読者さんには申し訳ないが、もう少しだけ付き合っていただきたい。
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タンクトップは数人の警察官に囲まれ、抵抗するでもなくパトカーの中へと吸い込まれていった。
俺はその様子を窺いながら、ひと仕事を終えた感慨に浸ろう…としていたのだが、どうも様子がおかしい。駐車場からパトカーが出ていく気配がないのだ。車内で簡単な手続きなどしているだろうか?
そしてそのまま10分ほど経ったろうか、いつ出発するのかと訝りながらも他のスタッフと雑談をしていると、かすかにサイレンの音が耳に入ってきた。そして、遠くで発せられたはずのその警告音は、ほどなく誰の耳にも明確に認識されていく。
普段であればなんてことのないサイレンだが、この時の俺は少なくない不安を感じていた。そして段々と大きくなるサイレンの響きが俺の懸念をも増台させていった。ここに向かってきているのではないか?
その不安はまんまと的中する。「緊急車輌入ります」のアナウンスと共に救急車が駐車場に入ってきたのだ。そしてほどなく、警察に促され、パトカーを降りて救急車に乗り換えるタンクトップの姿が見えた。
その刹那、俺に向けられた深い憎悪の視線が光る。それに反応するように、我が身に危険を知らせる信号が全身を駆け巡っていった…。
2人の警察官がこちらに向かって歩いて来るのが見える。既に十分過ぎるほどに嫌な予感はしているが、2人の足取りや表情から、その予感は確信へと昇格していく。これはひと悶着あるだろう。
「先ほどパトカーに連行した者がね、頭が痛いって言っているんですよ。それで、良く見たら後頭部から流血してましてね。これはどうしたの? と聞いたら、こちらの店員にやられたって言うわけですよ」
警察官は続ける。
「それで話を聞かせてもらおうと思ったんだけど、その…暴力を振るわれた方って、どちらにいますかね?」
(まずいな…このままだとこちらまで引っ張られてしまうかもしれない)
咄嗟に後ろにいた主任の左腕の上腕筋辺りを強く掴みながら手を挙げさせた。不意を突かれたからか余程痛かったのか、主任はその場で尻もちをついてしまう。
不安そうにこちらを見上げる主任にウインクで合図を飛ばし、俺は彼を両手で優しく抱えた。
「主任、どうしたんだ?」
疑心暗鬼の表情は残っていたが、しっかりした声で「何でもありません」という返答がかえってきた。
ここで俺は警察官に向けて話を始める。
「ご迷惑をおかけしてすみません。対応したのはこの者です。ただし、もちろん暴力などは振るっておりません。私が話を聞いている最中、むこうがいきなり飛び出して逃走しようとしたものですから、彼は逃がさまいとして本能的に奴の前に立ちはだかったんです。そしてそれでも暴れて逃げようとするものですから、その時にちょっと接触があったのでしょう。こちらが手を出したなんていうことは決してありません」
我々は一切嘘は言っていないが、警察官の疑念は晴れていないようだ。
「そうは言ってもね? 相手もあの通り怪我してるんだよね…」
俺は後ろにいた主任の横に回った。
「接触については、相手が無理に逃げようとして暴れたのが原因ですよ? それに…これは言うまいと思っていたのですが、ここにいる主任だって奴に怪我させられてるんですよ?」
ここで俺は主任にワイシャツを脱ぐように促す。するとどうだろう、主任の左腕の辺りに赤く引っ掛かれたような跡がはっきり付いていた。それはそうだ。今しがた、俺が思いっきり上腕筋を捻り上げたばかりだからな。
警察官が顔を近づけてその様子を確認する。
「こりゃあひでえな。真っ赤に腫れ上がってるじゃないか」
1人の警察官が思わず口に出してしまうほどのものである。
主任は俺の思惑に気が付いたらしく、俺が赤く腫れ上がった主任の腕に手を添えようとすると、「痛い痛い」と大げさなリアクションが返してきた。
この怪我は俺がこしらえたものだが、だからといってこちらが全く無傷ということではない。タンクトップもかなり暴れていたからだ。しかしこの状況でそういうことを必死に訴えるよりも、目に見える印象がいかに強いかということを、俺は経験的に知っている。だから手っ取り早い状況を敢えて作ったのだ。
そして俺は警官に明言した。
「今回の件ですが、私たちがゴト師に対して暴力をふるう理由はありません。それでも彼がこちらを訴えるというのであれば、主任も怪我をさせられたので、こちらも徹底的にやらせてもらうことになります」
2人の警察官はお互いの顔を見合わせ、少し離れたところまで歩いて行った。何か相談をしているようだ。
しばらくして1人がこちらに戻って来た。
「お話は分かりました。とりあえずこれで引き上げますが、また後で連絡するかもしれません」
これでようやく去って行った。
その後、突然上腕筋をひねりつぶすように掴んだ主任に平謝りをしたのは言うまでもない。
それから何日か経った頃、警察署から電話がかかってきた。
まず、タンクトップの頭の怪我についてだが、これはかすり傷程度なので何の問題もないということだった。こちらが殴ったりなどしたわけではないが、それでも何もなかったということでほっとしたことを覚えている。しかし気になるのは奴の意向についてだ。
警察はこう続けた。
「『訴えを続けるということであれば相手側の事情もじっくりと聞かなければならず、結果として長期に渡って拘束される可能性が高い』という旨を伝えたところ、すんなりと訴えを取り消しました」
良かった。我々にとってはこれで肩の荷が下りたと言える。
更なる朗報ももたらされた。タンクトップと一緒にゴトを働いていた相棒の小太りが即日逮捕されたという。どうやら小太りの方は不法滞在の中国人で、ちょうど所轄が追っていた中国マフィアの一味だったらしい。そんな事情もあったため、警察が躍起になって調べを尽くした結果、奴らは遂に起訴されたということだった。
聞くところによると、こういったゴト事例は、これまでは逮捕しても証拠不十分で釈放せざるを得ないという場合がほとんどらしい。そういう意味ではこの事件は全国でも珍しいケースとなったようである。結果、この不良外国人は強制送還、タンクトップは懲役刑を喰らったとのことだった。
この一件では、最後に冷や汗をかかされたが、昔の教訓が役に立った…と言えるのかもしれない。それは、警察は「喧嘩両成敗」という言葉に異様に弱いというものだ。
若かりし頃、こんなことがあった。
数人のヤクザが、表に置いてあった鉄製ののぼり立てで、店の前で女性2人に殴りかかっていたのが見えた。俺はそれを見て咄嗟に飛び出していた。このまま殴られ続けたらこの女は殺されると直感的に思ったからで、恐怖を感じる間もなかった。
無我夢中で何とかヤクザ連中から"凶器"を取り上げた…までは良かったのだが、ここでヤクザの怒りの矛先が俺に向けられてしまったのだ。しかもワケが分からないのだが、先程までやられていた女も含め、全員で俺に殴り掛かってきたのである。
これでは俺もひとたまりもない。あちこちから蹴られ殴られ、みるまに顔面は腫れ上がっていく。すると、この異変に気付いた店員が店の中から飛び出してきたことで、結果的に大乱闘に繋がってしまった…。
間もなく警察が来てヤクザは所轄に連行されていったのだが、当然、このままでは怒りが収まらない。現場を取り仕切っていた課長に、全身の痛みをこらえて俺は強く訴えた。
「あいつら、表で喧嘩してたから俺は止めに入ったんです。そうしたら今度は全員でこちらに向かって来たんですよ! 俺はパチンコ店という立場もあるので一切抵抗せずに殴られましたけど、このままでは納得がいきません。奴らを訴えますよ!」
すると、課長からは思ってもみない言葉が返ってきたのだ。
「悔しい気持ちは良く分かるよ。でもさぁ、相手も足が痛いって言ってるんだよ。見たら腫れ上がってるんだよね。どうしても訴えるというなら、店長にも来てもらって一晩泊まってもらうことになっちゃうよ?」
こんな状況で脅しとは! 俺は思わず課長を睨みつけ、さらに迫った。
「どちらが悪いか分かってますよね? 何でこちらがそんな思いをしなくてはならないんですか!」
しかし課長はまったく怯まない。こういった状況には飽きるくらい立ち会ってきたのだろう。
「分かってるよ…店長。悔しいだろうよ。だけどね、これがルールなんだよ。喧嘩両成敗だから」
何だよ喧嘩両成敗って! 馬鹿にするんじゃねえよ! 俺は喧嘩を止めに入ったんだ! そう強く思ったが、課長の言いっぷりは、決して自分の訴えを邪険にするようなものではなかった。そして、
「悪いけど俺を信じてくれ。必ず格好は付けさせるからよ」
そう言われ、渋々引き下がることになった。しかしもちろん納得などできるはずもない。しばらくは悔しい思いにかられながら過ごすことになる。
数日後。その課長から連絡があって、店に顔を出したいとのことだったので、カウンターで待っていた。
すると先日のヤクザ7人が、手錠とロープで繋がれた状態で、ズラズラと営業中の店内に入ってきたではないか。そして課長の指示でカウンターの前に一斉に正座すると、一人ずつ端から「すみませんでした」と謝ってきたのである。
正直、これには参った。実に迷惑極まりない行動ではあったが、しかし俺はそれを警察官の誠意と捉え、気持ちを収めることにしたのである。そんな経験があったから今回の一件を乗り越えられたのかなとも思う。
まぁ、本音を言えば、金輪際ゴト師などとは戦いたくないものだ。
(完)
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