目に見えるくらい不利な勝負にサイを振る

シリーズ名
パチビット (不定期更新)
話数
第6回
著者
ぜろいち
皆様こんにちは、今回が最後の更新となります…とお知らせしなければならないことが残念でならないぜろいちです。

前回の暴走が個人的にツボだったので、これからはレア台とか好きな台を探して打ちまくるという趣旨に変更してしまおうか? と思った矢先に最終回ですって(バタッ)。

思えば色んな後悔はありますが、地の利を生かして先行導入に突撃するという作戦を実行できなかったことは、読者の皆さんに申し訳なかったなと。


そんな、後悔が先に立たなかった連載も早11ヶ月となりました。応援していただいた読者の皆さんには心からの感謝を伝えたいです。特に応援なんてしてねーよという人も、つまんねーよと愚痴っていたとしても、このコラムを読んでいただいたことに心からの感謝を申し上げさせて下さい!

以前にも書きましたが、自分の実力から言えば「人類史上最速打ち切り」の可能性すらあった中でここまで続けられたのは、ひとえに読者の皆様のおかげに他なりませんからね。本当にありがたいことです。


さて最終回、どうしたものか? いつもと変わらず、最後まで変わらず、普段の実戦をつらつらと書いていこうか…とも思いましたが、何となく先週の南国育ちでド燃焼した感もあるんですよね。

ちなみに、最終回が近いから好きな台を打ったとかではなくてですね、まったくの偶然なんです。打ち切りを知らされたのは南国育ちを打った次の日だったんですが、もしかしたら南国育ちが最後に花を持たせてくれたのかもしれませんね。

さすがに都合よく解釈しすぎかな…いや、さすがまどかだ! そう思うことにしよう。



ありがとう、まどか! カットイン発生激アツ状態!! キュインキュイン♪


せっかくなので、最終回はこの連載にたどり着くまでのことを振り返ってみようかと思います。

実は私、結構な頻度でパチンコ店に通ってはいますが、通い詰める程ではないんです。と言いますか、意識的にある程度の距離を取るようにしているって感じかな(あからさまに「今は食える!」というような時はその限りではないんだけど…)。

なぜそうしていたかというと、パチンコを「打つ」ことだけで稼いでいくことを避けていたから。パチンコだけで稼ぐのって、働くことよりも楽な部分が多いので、そこだけに頼ったらダメだろうなと思ったわけです。

あ、「楽」って言い方は語弊があるかな。厳しいホール環境で立ち回っていく(勝ち続ける)のは、会社員として働くことより遥かに大変かもしれないので、あくまで自分の環境で自分が感じた印象でしかないので悪しからず。パチプロやスロプロと言われる人たちを批判する気持ちなど1mmもないですよ(自分の立場を考えれば当然ですが)。


とにかく、自分が感じたのは、パチンコで稼ぐ限りは自分だけの問題だから誰かに怒られることもない、自由に休むこともできる。それでいてパチンコの期待値は普通のバイトで稼ぐ時給よりも遥かに高い。そういう意味においては、

「こんなに楽なことはない!」

かつての自分はそんな風に考えていました。その浅い考えのおかげで、専門学校を卒業する間際になっても就職先など探さなかったですからね。


でもね、ふと考えるようになったんです。朝、人波に揉まれ眠い目をこすりながら会社へ向かう人、工事現場で汗を流して働いている人、誰かのために命をかけている人…そんな人たちを目にすると、『本当に自分はこのままで良いのか? 楽をして金を稼いでいるだけで良いのか?』と。

そんな時は決まって、「他人に迷惑をかけているわけじゃないし、人それぞれだろ? これが自分のやり方なんだ。それにパチンコをヤメたら収入はどうする? 自分ができることなんて他に何もないんだぞ?」と、自分自身に何度も何度も言い聞かせ、それ以上自分を追い込まないように誤魔化していました。

だけど心のどこかに残っていた『この状況から脱却したい』という気持ちを消し去ることはできなかった。そうして、上手く自分を言いくるめてまた次の日も打ちに行く…という繰り返し。だって怖いじゃないですか?


でも結局のところ、自分を守っているつもりが自分の首を絞めていたんだな、と気付くわけです。稼ぎ的には満足いく中で敢えてバイトをしていたのも、そんな理由があったからです。

自分としては、バイトをすればするほど実質的に収入は減っていくんだけど、それでもシフトの日数はどんどん増えていきました。パチンコ打ちの知り合いからは「なんで日当を落としてまでバイトなんかに行くの?」とずいぶん不思議がられましたが、やはり変わりたいという気持ちがあったんです。


ちなみにバイト先にもパチンコを打ってる人が何人かいましたけど、そういう人たちとは思いのほか楽しく話ができました。この演出が良かったとか、とんでもないハマリを食らったとか、くだらないっちゃくだらないものなんですけど。

でも、自分の周りの「期待値を追いかけることが全て」という世界の住人が話すような内容ではなかったので、純粋にパチンコを楽しんでいるというのが新鮮でした。パチンコを好きで打ってる人って、本当にに楽しそうに喋るしね。


そんな風に、純粋にパチンコが好きな人と接する機会が増えていく中、本気でブチギレ状態になることも増えていきました。その1つは、よく朝の並びで一緒になる集団の1人が言い放った、「パチンコやスロットを打った方が遥かに稼げるのに、わざわざ会社行って働いてるヤツが馬鹿に見えるよ。アンタもそう思うだろ?」という言葉。

他にも、思い出すだけで嫌な気持ちになることが多々あったわけですが、自称パチプロという連中は、そういう思想を持っている者も多いのです(特に若い奴)。立場的には自分も同じだったわけですが、それだけの理由で同類とみなされる…というか、彼らに同類とみなされたことがどうにも我慢できなかったんです。もちろん全てのパチプロが非常識野郎だとは思ってませんけど、この時から自称プロみたいな奴に猛烈に嫌悪感を持つようになっていきます。

だけど、何だかんだ言って自分だって似たようなもの。バイトするよりパチンコを打った方が期待値が高いなんて考えを持っていたこと自体は確かなんだから。だからこそ余計にソイツの発言が自分と重なって反発したのかもしれません。


そもそもどんな立場であれ、私は立ち回りを他人と比較して『自分は正しい、偉いんだぞ』と思っているようなヤツが大嫌いであります。他人を一方的に負け組と決めつけ、コイツはこんな立ち回りしてるから駄目、自分のやり方が正しい、みたいな。

もしかしたらその人の立ち回りは圧倒的に正しく、他はマズいのかもしれないが、わざわざ他人と比較する必要があるのだろうか? 自分の正しさを強調して他人を貶めるのは格好悪くないか? ってね。もちろん比較することが大事な局面ってのはあるんだけど、他人に迷惑をかけてないんだったらボーダーでもオカルトでもいいじゃない。


そういう反感やらがピークに達する頃、パチンコにまつわるエピソードの中で一番落胆させられる事件が起こります。それはバイト先が消滅して暫く経った頃なんですが、先ほど書いたような嫌な出来事が増えてきて、次第にホールから足が遠のいていった時期と重なります。

夏の暑い日、ある台の新台入れ替えがありました。スルーしても良かったのですが、知り合いに強く誘われたこともあり、気分転換を兼ねて並ぶことにしたんです。勝てるかどうかなんて考えてなかったですね、単なる気晴らしって感じ。

とはいえ夕方5時のオープンに向けて何時間も並ぶわけで、暑い中でも待ち続けるという覚悟はしていなければなりません。それでも結構な人が長時間並んでおりましたね。


そして3時頃、それは起こったのです。自分の後ろに並んでるいかにもな5人組が暑い暑いと騒いだ末にそのホールの本社に電話をかけ、「お前らのホールに並んでるんだけど、こんな暑い日に並んでるのに、何もサービスはないのか! この暑さを何とかしろ! 飲み物ぐらい出せ! 熱中症になったら責任取れるのか!」と凄まじい怒声と罵詈雑言を浴びせていくわけです。信じられますか?

当然ながら、並んでくれと店が頼んだわけではありません。早い時間から並んでいるのはこちらの勝手なわけです。それなのになんでこんなに偉そうにできるのか?

精神的に弱っている中でのこの光景は、トドメでした。もう本当に嫌になりました。同じところに並んでる人間として、同じような人間とみなされるのが耐えられませんでした。


結局、店員さんが飲み物を配ってまわるような事態になるんですが、先ほどの輩が「俺が電話したお陰」などと嘯いてるのを見て、本気で吐き気を催してきます。友人が一緒だった手前、オープンまで我慢しましたが、結局私はすぐに帰りましたよ。

それからしばらくの間、パチンコ店に行かなくなりました。いや、行けなくなったという表現の方が正しいでしょう。

それからはふさぎ込む毎日。何もしない日々が続き、公園で1日ぼ〜っとしてるだけの日があったり、突然涙が出てきたり、夜になると死にたくなったり。今思えば、鬱状態になっていたのかもしれません。まぁ、脆い人間だったんでしょう。


でもね、その間ず〜〜〜っと考えていたんですよ、次に何をするべきなのかを。

ただ、冷静に考えれば選択肢なんてほとんどないです。何をするべきかなんて考える意味なんてほとんどない。だって何もできないんだから。だから、何をするべきかというよりも、自分からアクションを起こすという気持ちを奮い立たせるための準備期間だったんでしょうね。

そしてたどり着いたのが、絵を描くことでした。そこからはひたすら原稿を書くことに集中しました。そして書いては出版社に持ち込み、そしてまた書いては持ち込んで…の繰り返し。そんな中で、運良く漫画を連載するチャンスを得ていくわけです。

でもそれだけでは生活はできなかったので、別口でお金を稼がないといけない。その時、正直言えばパチンコで稼ぐほうが楽だったけど、パチンコに頼らずにやっていこうと思い定めました。楽をしようとしたらダメってことで、すぐにバイトを始めたんです。


ちなみに、今なら笑い話ですけど、最初の原稿はそれはもう酷い出来だったと思います。何せトーンも貼っていないペン1本で描いた原稿ですからね。机がなかったから、雑誌やらを集めて机代わりにして板を置いてその上に下敷きをおいてね(ガタガタして描きにくかったなぁ、もちろん今は机で仕事してるぞ)。そして経験もナシっていうんだから、限りなく無謀な挑戦だったと思います。

勝ち目のない勝負はしないと口癖のように言っていた私でしたが、あれは、初めて目に見えるくらい不利な勝負にサイを振った瞬間だったと言えますね。勢いとやる気だけしかありませんでしたよ。


でも、こう書いてみると馬鹿みたいですね。無謀にも無策のまま攻め込んで嬉々としてるんですから。こんなの、戦国時代なら速攻死んでますよ。だけど、この時初めて人生の目標を得たと感じたのは偽らざる本心です。

原稿を完成させて、初めて出版社に持ち込んだ時の達成感はヤバかった。初めて雑誌に掲載された時の感動は言葉にできない。今までに感じたことのない気持ちがドーンと押し寄せてきました。

「やったぞーーーー!」

ってね。自分の中からこんな感情が湧いてくるなんて、こんな感情が自分の身体の中にいたなんて!


その漫画の連載中は先行導入などに行くことが多かったので、限られた環境や条件でできるだけのことをやるという立ち回りも身につけられました。前回の南国育ちもそんな感じだったんじゃないだろうか?

残念ながら辰巳出版さんで漫画が掲載されたことはありませが、原稿を持ち込んだ時の担当さんの縁で今回のコラム依頼に繋がっていったのだから、人生は何があるか分からないですね。あれからかなり時間が経過しているんですが。

ビックリしましたよ、突然知らない番号から電話があったから。しかも東京からでしょ(自分は名古屋)。最初は間違い電話か新手の詐欺とかかなと警戒しました。結局、そこから上手く話が進んでいき、この11ヶ月に及ぶ連載がスタートしたわけです。



今回で連載が終わるのは私の実力不足というところが本当のところであります。ですが、この機会をいただけたこと、そして応援してくれる人がいたことについては、とてもありがたく思っています。このコラムは終わりますが、たとえ1人でも応援してくれる人がいるのであれば、その人の期待に応えられるように頑張るぜってなもんです。

自分としては、また1つ貴重な経験をさせていただいた思ってます。また1つ経験値を手に入れ成長できたな、と。だから、私ぜろいちは当初の目標を達成するまで何度でも立ち上がって甦るつもりです。



まだまだ勝負は終わらんのだ! 立ち上がれ! こんなところで倒れていたら、あの時漫画を描くと決意した意味がなくなってしまう! 悔しい思いをしたり困難に出くわすのは、これが最初でもないしもちろん最後でもないだろう。でも、それでも立ち上がるのだ!


さて、立ち上がったところで、前を向いて次の勝負に向かいましょうかね。

ということで、これでパチビットは終了となります。今まで応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。